ドイツでワーホリ!!

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人生に影響を与えた1冊『彼らの目は神を見ていた』

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」

 

大学でアメリカ黒人文学を専門としている教授のゼミに所属していました。特にアメリカ黒人文学に興味があったわけではないのですが、なんとなく多様なアメリカ文化に触れたいなぁと思い選んだゼミ。

 

そのゼミの課題で読んだ一冊です。

 

ゾラ・ニールハーストンの『彼らの目は神を見ていた』

彼らの目は神を見ていた (ハーストン作品集)

彼らの目は神を見ていた (ハーストン作品集)

 

 なんだか仰々しいタイトルだなぁというのが最初の印象でした。

 

この本から学んだのは何にも依存しない自分のための人生を生きることということ。

 

今手もとに本がないので、細かい内容はうろ覚えなのですが。

 

主人公の黒人女性、ジェイニーの人生とアメリカ黒人コミュニティーを描いた作品です。男性との関わりの中でジェイニーが人生のそれぞれのステップで重要視するものが変わっていくところに彼女の精神的成長が描かれています。

 

少女時代甘い恋に憧れながらも、現実には容姿もよくなく愛もない相手と結婚させられます。相手に愛情も抱けない、容姿にもちっとも魅力を感じない。何も満たされることのない結婚生活です。

そんな中、お金持ちの黒人男性と出会い最初の夫の元を逃げ再婚します。(この辺の経緯が正しかったか自信がありませんが)お金持ちの奥さんとして周りの黒人たちよりもいい生活を送れるようになったジェイニー。しかしこのお金持ちの夫は、彼女に夫に従順な妻であることを求めるようになります。(この辺はいかにもフェミニスト的ストーリーかも)彼女が彼に意見することを許さないし、他人の前で彼女の美しい髪を隠すように命じます。そんな夫の振る舞いに窮屈さを感じ、金銭的な豊かさは手にいれたものの、一人の人として対等であれない夫に不満を感じるようになるのです。

人生、結婚はお金だけじゃ幸せになれない的な。

 

その後出会うのがティーケイクという年下の黒人男性。農場で働いていてそんなに裕福ではないけれど、甘い言葉でジェイミーの恋心を満たしてくれます。ジェイミーは3人目でようやく、少女時代に憧れていたような甘い恋を経験することができるのです。恋をして、愛する相手に愛されて、初めて女性としての喜びを知ります。そっかぁ、やっぱり人間お金じゃなくて愛なんだね、めでたしめでたし、ってなるのかと思いきや。ある日嵐で川が氾濫しジェイミーとティーケイクは一緒に流されてしまいます。その時近くに流されていた犬にティーケイクが咬まれ狂犬病にかかってしまい。ジェイミーは彼の看護で常につきっきりでいなければならなくなります。そんなある日、正気を失った彼が彼女に暴力をふるおうとし(だったかな・・・?)最後はジェイミーがティーケイクを銃で撃ち殺してしまうのです。

 

ざっくりこんな感じだったと思います。

 

最後が衝撃的でした。愛する彼とハッピーエンド!かと思いきや、自らの手で彼を射殺してしまうなんて。

でも、重苦しい終わり方ではないんです。

ジェイミーは自分の自由のために愛する人すら捨てる(殺してしまう)強い意志を持った女性なのです。(射殺ってのがちょっと極端なストーリーではありますが。)

 

愛する相手と自分の自由(彼の看病につききりで自分の自由を失ってしまっていたので)の選択を迫られたとき、男性との愛ではなく自分の自由、自分の人生を選ぶこと。愛に依存しない自分の人生。

少女時代に憧れた甘い生活は、最終的には誰かに依存するものではなく自由である自分なんだということ。

 

 

これを読んだ当時、私は大学3年生の夏。

 

就職活動を目前に、でも何をしたいのかも分からないし、そもそもまだ自分が働く姿も想像できず、いずれは専業主婦になりたいと本気で思っていた。自分で稼ぐのではなく経済力のある旦那さんを見つけて養ってもらいたいと。

思っていたし公言もしていました。

 

教授は60才手前のおばちゃまフェミニストで(女性の教授はフェミニストが多いですよね)、私は「女性は経済的に男性の奴隷になってはいけない。経済的に依存してしまったら自由でいられなくなってしまうのよ」といったようなことを言われたのを覚えています。

 

 女性が男性と同等の権利を主張してぎゃあぎゃあ言うのはエレガントではない、私はフェミニズムってあまり好きじゃないなぁと思ってはいたものの、この大学3年生の就活をひかえた時期に教授のフェミニズム的アドバイスをもらったこと、この本を読んで女性の人生について考えさせられたことは、その後の人生を考えるのに大きな影響を与えてくれたと思っています。

 

当時、とりあえず28才くらいでは結婚して・・・(あっという間に28才を過ぎてしまった^^;)、って考えてたしそれ以外の選択肢なんてないと思っていた。けれど、結婚に重きを置くのではなくて、自分が一人の人間として満足できる生き方を選ぶべきなんだって、思い始められたのはこの本を読んだ頃からだったと思います。

 

たとえばこれは海外生活をしたいって思ったときにも言えることで、海外で暮らしたかったら一番簡単(簡単といってしまうと語弊があるけれど)なのは国際結婚すること。ビザも取得できるし働かずとも海外で生活できる。運よくそういう相手に出会えればそれはそれでいいけれど、でもそれって相手ありきになってしまう。だから私は結婚に頼るのでなく、自力で海外で生活していける方法を選びたい。そう思っています。

 

 

 最後にちょっと、黒人文学について。ゼミの専攻だったとはいえ、アメリカ黒人文学について語れるほどの知識はもっていません。でも、ゼミというきっかけがなければきっといまだに出会うことがなかったであろう分野です。なかなか黒人文学を読んだことのある人って少ないのではないかと思います。

そんな中でもトニー・モリスン(ノーベル文学賞受賞)、アリス・ウォーカーが有名どころでしょうか。

 

正直、黒人文学は万人うけするような面白いものではないです。

黒人差別時代の物語は本当に読んでいて辛くなるし、黒人女性文学を読むとレイプは普通に出てくるのに最初驚きました。(だから、黒人差別について学ぶにはすごくいいと思います)

でもそんな中生きてきた人たちの作品だから、物語にものすごく力強さがあるんです。

読むのを止めてしまいたくなるくらい気がめいるような生活が描かれているけれど、登場人物たちには現状に立ち向かっていくパワーがあって最後はいつも、エネルギーをもらえます。うまく言葉にできないけれど、これが黒人文学の魅力じゃないかなぁと思っています。

 

英文科だったこと。ちっとも役に立たない学問だなぁ、って。今でも思います。だけど文学は何よりも人生を豊かにしてくれるものだとも思っています。